混沌の城(カオスのしろ)

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夢枕獏の「混沌の城(カオスのしろ)」です。私は夢枕獏と言う作者が大好きなのですが、この本は彼のこの手の本にしては比較的明るい感じのする物語で、その明るい色調が結構気に入っています。

舞台はと言うと未来の日本、しかし人為的天変地異により地形は激しく変わり、日本国内を地理的に分断されているために、各所に勢力が分散され各勢力はお互いに日本征服を目指して画策している。文明は部分的にはかなり退化しており武力は刀剣類を主とする世界。天変地異以来突然変異を起こす人間もおり、人々は入り交じって独特の世界になっています。

上にもかいたのですが、夢枕獏さんのこの手の小説「上弦の月を食べる獅子」、「涅槃の王」、「黒塚」等は全編を通して生きる事の悲しみ、苦しみが重くのしかかるような感じを与え、全体として色調は暗く重い物に感じられます。しかしこの本は同じような事を主題としているにもかかわらず、全体として明るく、希望を感じさせるものとして書かれています。

あるいは主人公たる「武蔵」のキャラクターが影響しているのかもしれません。茫洋として力強い感じ、大きな器を感じさせる、「サイコダイバーシリーズ」の九門鳳介の様なタイプと言えば良いでしょうか?

日本の地下に眠ると言う、巨大なオーム貝「大螺王」の力、螺力。天変地異はそれをコントロールしようとして失敗してしまった結果だと言う。人として螺力を使う事の出来る「螺人」螺力をコントロールできるのは一部の特異能力を持つ人の意識だと言う。

物語はクライマックスを迎えた後、「武蔵」が蛟族の少女「イサキ」と以前は敵だった風変わりな男「片桐」と共に日本の2大勢力のうちいまだに先進的テクノロジーが残っていると言われる京都へ向かう所で終わってしまいます。

なんという終わり方でしょうか、ただでさえ物語を散々引き延ばし、何十年も読者を待たせてしまう事もある夢枕獏さんです。続きは非常に楽しみなのですが、一体いつになったらこの続きが読めるのでしょうか?。アマゾンのリストに「存命中に完結を乞う。」というのがあるほどに、まだ終わっていない物語がこれほどある作者と言うのも珍しいのではないでしょうか?、私も以前のエントリーで「死ぬまでには楽しむ事が出来る」と書いた事がありますが、夢枕獏さんには何とか死ぬまでには取りあえず終わっていない物語を完結させて欲しい物です。

しかし、私は物語がいつまでたっても終わらない事に不満を持っているわけではありません。世の中には序盤では期待させるものの終わり方を間違えたために駄作に陥ってしまった作品がたくさんあるからですし。彼が本当に自分の作品に対して全うに向き合っている事が良くわかるからです。

魅力的な作品群をどうか未完のまま終わらせないで素敵な結末を迎えさせて欲しいと願っています。

混沌(カオス)の城〈上〉

混沌(カオス)の城〈下〉

上弦の月を喰べる獅子

黒塚

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この記事を書いた人

もとメンエス店長、今は別な仕事になりました。
ぽちぽち書きます。

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