篠房六郎氏の「ナツノクモ」8巻でとうとう完結となりました。私が読み始めた時ですでに6巻が出ていて、間もなく7巻が出た。と言うタイミングで読み始めたものですから、あっという間に終わってしまった感があります。怒濤のように私の中を駆け巡り、どしっとした印象を残して鮮やかに終わってしまいました…。
架空のネットワークゲーム上で展開される物語で、登場人物はほとんどがゲーム上のキャラクターと言う変わった物語です、現実の人間が登場するのはごく一部と言う徹底ぶりです、ですから物語自体もゲーム上での出来事なのです。
しかし、ゲーム上で起きる不可解な出来事の数々、その裏側には現実社会での人間の心理問題が影を落としているのです。いや、ゲーム上だからこそその影は現実社会以上に拡大されて、ストーリーは展開して行きます。
お互いに繋がっている事、そのことだけが彼らの行動するおおもとになっているって言うこと、ネットワーク越しに繋がった彼らの繋がりはクモの糸のようにかぼそいかも知れないけれども、繋がっているそのことだけでも充分だったって事…。
だれもかれもがなんかの問題を抱えていて、普通じゃないのかも知れないけど、一緒に繋がっていて行動を共にしている事だけでも仲間として強い絆になって行くと言う事。
限られた時間の中でお互いの事を考えて何かをするって言うことを通して変わって行くって言うこと。
少しだけ断片をのぞかせる非情な現実と、それを越えてゲーム上で演じられるもう一つの現実との対比。どちらも当人たちにとっては間違いなく現実なのでしょう。
私がここで blog を書いてるって事も、誰かとコミュニケーションしていたいから。インターネットと言うものが育つ以前から貧弱な環境でネットワークに繋がってきた、2400bps のアナログモデムの時代から、その頃から繋いできたのは誰かと繋がっていたいから、その頃からコンピュータと言うのは単なる計算機では無く、コミュニケーションとしてのツールとして扱ってきたのだと思います。
それはこれからも変らずに続いて行くのだと思います。そう遠くない将来、ナツノクモのような環境は現実のものになると思います。どう繋がるかでは無く、繋がって何をするのか。
物語のラストは闘いに向かう、と言うところで終わってしまうのですが、問題は戦いの結果がどうなるかでは無く、みんなで闘いに「向かう」と言う気持なのだと思います。
あまりに強烈な印象でうまくストーリーを語る事が出来ないようです、もうすこし落ち着いたらあらためて語りたい気持になるかも知れません。
彼らが今夜戦いに赴く事で少しでも前に進めますように、そして私も。
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